「マンション」は冬あったかくて、「戸建て住宅」は寒いとよくいわれます。
それは、「マンションの中住戸」では、外気に接する面が少なく、隣の住戸が断熱材の役割を果たしているため、外気の影響を受けにくくなっているためです。
一方、「戸建て住宅」のほうは、家全体が外気にさらされているため、外気の影響を受けやすくなっています。
同じマンションでも、最上階や角部屋は、外気に接する面が多く、夏暑く・冬寒い状態になりやすく、光熱費もかさみがちになります。
ですので、「戸建て住宅」で「マンション(中住戸)」並みの快適性を手に入れようとすると、マンション以上に高い断熱性をもった住宅を建てる必要があります。
■家の断熱性能(燃費)を決めるQ値、UA値
家の断熱性(燃費)を決める断熱性能は、Q値、UA値という数値であらわされます。
・「Q値」は、「家から逃げる総熱量」を「床面積」で割った数値。
・「UA値」は、「家から逃げる総熱量」を「家全体の表面積(外皮表面積といいます)」で割った数値。
数値が低いほど、家から熱が逃げにくく、断熱性が高く、光熱費が抑えられることになります。
今まではQ値が主に使われてきましたが、2020の省エネ基準ではUA値が使われるようになるため、少し面倒ですが、自分の家の断熱性能を確認するには、両方の数値を区別して確認することが必要です。
マンションのQ値は、試算すると、だいたいQ値1.9、UA値0.56ぐらいになります。
戸建て住宅のほうは、次世代省エネ基準(6地域)でQ値2.7、UA値0.87ほどです。
日本では、全国を8つのエリアに分けて、それぞれの地域で最低限必要な断熱性能(Q値、UA値)が
決められています。
比較的温暖な東京から大分あたりの6地域については、Q値2.7、UA値0.87が次世代省エネ基準として決められていますが、マンションのQ値1.9、UA値0.56に比べてかなり劣る断熱性能です。
そのため、東京や大阪などの6地域では、次世代省エネ基準で建てられた「戸建て住宅」は「マンション」より夏暑く、冬寒いとなりやすいのです。
一方、北海道など寒い地域ではそこそこ高い断熱性能が次世代省エネ基準となっているため、「外は寒いけど、家の中はあったかい」ということになります。
マンション並みの断熱性とは、東北の3地域基準(Q値1.9、UA値0.56)が一つの目安になります。
4~7地域については、3地域の次世代省エネ基準を満たすことで、マンション並みの快適性が手にはいることになります。
■健康な暮らしを実現できない日本の断熱基準
日本の次世代省エネ基準が低性能であることは、世界の住宅事情を見ても明らかです。
北海道や青森の旧Ⅰ、Ⅱ地域では欧米並みのQ値1.6や1.9が設定されておりまずまずですが、
関東、関西の旧Ⅳ地域では、欧米よりも低いQ値2.7が設定されています。
欧米では、断熱性能というのは人の健康を左右する重要な指標とされているため、
比較的温暖な地域でもそこそこの断熱性能が最低基準として設定されているのです。
UA値で比較しても同様です。
仙台から鹿児島までの4~7地域は、あのあったかそうなカリフォルニア州より低い断熱基準となっていますし、お隣韓国の基準よりも甘い基準となっています。
■これからの家づくりのポイント
これから戸建て住宅を建てる場合(4~7地域)は、国の決めた次世代省エネ基準は最低基準と考え、Q値1.9以下、UA値0.56以下を目安に自宅のプランを計画する。